茨木のり子さんが残された詩歌の中でこの詩が最も多く読まれたものだと思います。それはこれから先も変わることがないと確信しています。むしろコロナ禍を通り、アフターコロナの時代が来た時には更に、彼女の詩は輝きを増すのではないでしょうか?
ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて
気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか
苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし
初心消えかかるを
暮しのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった
駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄
自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ